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修繕をめぐるトラブル②

前回の記事からの続きです。

 

 

 

4.修繕に関する特約

 

(1)借主に負担させる特約は有効か

貸主の修繕義務に関する民法第606条は、任意規定すなわち当事者間の合意で任意に修正変更できる規定であり、また借地借家法でも特に修繕義務に関する規定を設けておりません。

そこで、修繕に関する特約は原則としては有効と解されており、貸主の修繕義務を特約によって軽減したり免除したりできるというのが判例・通説の考え方です。

修繕義務に関する特約をする場合は、その範囲を明確に取り決め、契約書中に明示することが何よりも大切です。

この特約が不明確なため紛争となっているケースもかなり多いのです。

たとえば、

 

(賃借人の修繕義務の範囲)

第〇〇条 乙は、次に掲げる修繕は乙の負担をもって、これを行うものとする。

1 畳の表替え・裏返し、障子・襖の張替え

2 ガラスの取替え

3 水道のパッキングの取替えその他の補修

4 蛍光灯その他の照明器の交換

5 台所、風呂の設備の補修

6 電気スイッチの修理

 

 

というように具体的に記載することが必要です。

 

 

(2)特約内容の解釈

「賃借人が修繕を負担する」という抽象的・一般的な定めを契約書中に書いている場合、その合意内容は一見明確なようですが、問題があります。

この特約は、単に貸主の修繕義務を免除するという意味にもとれますし、そうではなく、借主に積極的な修繕義務を課するという意味にもとれるからです。

 

「入居後の大小修繕は賃借人がする」旨の特約について、最高裁の判例(昭和43年1月25日)は、「同条項は単に賃貸人が民法第606条第1項所定の修繕義務を負わないとの趣旨であったにすぎず、賃借人が家屋の使用中に生ずる一切の破損個所を自己の費用で修繕し、右家屋を賃借当初と同一状態で維持すべき義務があるとの趣旨ではないと解するのが相当である」といっています。

要するに、借主がその状態でかまわないというのであれば、(保管義務に違反する場合は別として)、積極的に修繕をしなければならないという義務までは負わないということです。

 

 

(3)特約が無効とされるケース

修繕義務に関する特約は原則として自由だといっても、どのような特約でも有効というわけにはいきません。

内容によって信義則(民法第1条第2項)あるいは公序良俗(同法第90条)違反あるいは、借地借家法第30条、第37条の類推適用を根拠に無効と解されるものもあり得ます。

当事者間の諸事情を総合考慮して有効無効を決めることになりますが、賃料が世間相場並みであるにもかからわず、土台、屋根、外壁、柱などの主要構造部分の大修繕も借主が費用を負担する旨の特約は、その限りにおいて効力を有しないと解するのが一般的見解です。

 

 

(4)修繕義務を履行しない場合の効果

貸主が行うべき修繕をしなかった場合は、借主は債務不履行の一般原則にしたがって、履行の請求(「修繕せよ」という請求)、修繕義務の不履行を理由とする損害賠償請求または賃貸借契約の解除をすることができます。

また、客観的にも修繕が必要な場合、借主のとり得る手段として、修繕が必要であることを貸主に通知(民法第615条)したうえで自ら費用を出して修繕し、その費用をただちに「必要費」として償還請求をすることができます(民法第608条第1項)。

 

さらに、賃料減額請求あるいは賃料の支払拒絶に関する問題があり、若干の争いがあるところですが、借主が賃借物の一部滅失の場合における賃料減額請求に関する民法の規定(第611条第1項)を類推して、賃料の減額請求ができると解するのが通説・判例です。

 

貸主の修繕債務不履行の場合、借主が賃料全額の支払いを拒絶することがしばしばありますが、まったく使用収益ができない場合であればともかく、使用収益に支障があったとしても、なお使用収益できる場合は、賃料の一部の支払いを拒否できるにすぎません。その限度を超えた支払いの拒絶は債務不履行になると解されています。